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アオリイカ基本編

2011 年 7 月 1 日

体色は興奮すると華麗に変化。グルメ度も数多いイカの仲間の中でも最右翼。初夏には大型、秋からは中型。

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ツツイカ目ジンドウイカ科

評価が低いのは食わず嫌い

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アオリイカは胴の両側いっぱいに丸みを帯びた大きな鰭を持っている。上から見るとスミイカやモンコウイカなどによく似ているが、コウイカの特徴である石灰質の硬い甲は持っていない。スルメイカなどと同じキチン質の軟骨を持ちツツイカの仲間だ。
 そしてスルメイカの目はむき出しの「開眼」だが、アオリイカはヤリイカなどと同じ「閉眼」で目は透明な膜に覆われている。

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 種の固定の目安となるわ腕長式は「3・4・2・1」。ちなみにヤリイカは「3・2・4・1」だが、同じ閉眼のアオリイカ、ヤリイカ、そしてケンサキイカは兄弟のように近い仲間だ。
 ここでアオリイカの”戸籍”をまとめておこう。
 軟体動物門→頭足類→二鰓亜綱→ツツイカ目→閉眼亜目→ジンドウイカ科(ヤリイカ科)→アオリイカ(Sepioteuthis Leesoniana)。
 暖かな海に広く棲んでいて中東の紅海やオーストラリア西岸を含むインド洋、そして西太平洋などの亜熱帯から温帯にかけての暖海の深さ100m以内の沿岸の浅海に棲んでいる。

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日本列島の北海道にもいるが少なく、本州の太平洋側は鹿島灘から、日本海側は福井県から西、特に四国、九州、沖縄に多く見られる。
 晩春から初夏にかけて、岩礁が散在して藻が茂る浅海に卵を産みつける。成長は早く、ふ化した幼生は秋には胴長20cm余り、冬を迎える頃には30cm余りにも育つ。
 ほかのイカ類と同様にアオリイカも夜行性で特に日没、夜明けの”マズメ”は活発に行動する。頭部腹側の筒(漏斗)の向きを変えることで前進、後退、回転を素早く自在にこなし、ゴムのように長く伸びる2本の触腕でエビや小魚などを捕らえて胴長45cm,4kg余りに育つ。

<<引きは強く、グルメ度も抜群>>

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背面にオレンジや黒っぽい褐色の色素胞を持っていて、普段はほとんど透明だが興奮したりすると褐色にグリーンやブルー、オレンジなどを混ぜ合わせたような実に複雑、華麗な体色に変化する。雄は細かい横縞、雌は白っぽいスポットで性別は一目でわかる。特に目の周りはエメラルドグリーンに妖しく輝き、息を呑む美しさだ。
 このアオリイカ、グルメ度も数多いイカの仲間の中で最右翼。市場性は時にマダイに勝っている。しかし釣りの相手としての評価は正直なところさほど高いとは言えない。その原因の多くは”食わず嫌い”で、「イカは魚のように引かないから」と一度もトライせずに敬遠する人が多いのだが、実際に一杯でも釣り上げると、その引きの迫力、取り込みまでの緊張感、華麗な姿態、そして抜群のグルメ度の虜となってしまうだろう。

ローカル・ネームは多彩で房総や三浦などで「アオリイカ」。三浦の一部や高知などでは産卵のために藻場にやってきて釣れるところから「モイカ」。普段平和に泳いでいるときは透明に近い体色なので鹿児島など九州各地や瀬戸内海地方で「ミズイカ」。大きな鰭がバナナの葉のようなので伊豆方面で「バショウイカ」。胴が靴の形に似ているので紀州の一部で「クツイカ」。このほか「バカイカ」「タチイカ」「シロイカ」などと呼ぶ地方もある。

<<肉食性で夜釣りが有利>>

ここでアオリイカの習性や食性等から釣りのポイントを絞り込んでみよう。
?イカ、タコ類に共通する”真水嫌い”なので川水が注ぎ込む湾奥の海には棲まない。外洋に面した塩分濃度が高い磯周辺や水深40m以浅の岩礁底や砂地に岩礁が散在するような海域を好む。
?産卵は4~7月にかけ、浅海の藻や岩礁に産み付ける。
 この初夏の頃は親である大型が高い率で釣れるが、孵化した子は秋には20cm余りに育ち、冬には30cmにも成長して餌を追う。初夏は大型、秋から中型が数多く釣れるシーズンだ。
?好物はエビや小魚など。完全な肉食性でシバエビ、クルマエビ、イセエビなどあらゆるエビ類のほか、磯や岩礁底に棲息するベラ類、ハギ類、ヒメジ類、小メジナ、ギンポウから小アジまで、さまざまな小魚を貪欲に襲う。
 ちょっと極端な言い方だが生きている小魚なら何でも飛びつくし、ルアーにも敏感に反応する。このアオリイカ専用のルアーは「餌木」といい、古くから日本で生まれはぐくまれてきた。
?夜行性なので夜釣りが有利。特に凪の月夜がチャンスで満月の前後、陰暦の各月8~22日にかけての上弦→満月→下弦の半月間が狙い時。

<< 餌   木 >>

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銅貨の天保銭をオモリに使った餌木が現存しているところから、江戸時代にはすでに開発されていたと推察されるアオリイカ用日本独自のルアーが「餌木」。
 クサ木、アマ木などの木を全長15cm程度のエビ、小魚型に成型、古くは焼いて模様をほどこしたうえ、尾部にハリ、胸にトリの羽根やシュロの繊維などで胸鰭、ビーズ玉などで目、腹前部に銅貨やナマリなどのオモリを装着し、頭を下にゆらゆら沈降するように調整した。

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白木のままで長時間水に浸すと浮力を失い性能が低下するため、やがてニスやエナメルなどの塗料で彩色されるようになった。
 さらに最近では木やプラスチックのボディに赤などの光るプラスチックシートを張り、その上から化学繊維を粗く織った多彩な折り柄と模様の布で覆った餌木が主流となっている。
 ハリ(カンナ)は2段で根がかりを配慮して背部のみに6本ずつ計12本装着したもの。前後5本ずつ10本バリを360度均等に装着したものや笠型に曲げた14本バリを2段装着したものなどがある。目は赤ビーズ玉を真鍮釘で留めたものが多いが、蛍光ビーズやガラスの人口目、模造真珠などを取りつけたものもある。

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また1993年頃よりボディを2分して尾部がゆれるよう設計された「ジョイントタイプ」も登場している。いずれにしてもこの餌木はまず、釣り方に応じた特性のものを選ぶことが大切だ。つまり、キャスティングやトローリングは水に浮かべると頭をやや下に向けてゆっくりと沈むもの、沖のシャクリ釣りには頭を下に急な角度で沈む餌木が望ましい。
 さらに色は大変重要な要素で、潮色によって、昼か夜か、日没前後か、おぼろ月夜か、明るい満月か、闇夜かなどによりブルー系がよかったり、グリーン系にばかりヒットしたり、明色系にイカの人気が集中したりするので、出漁の際は少なくとも数種類の色が異なる餌木を持ち込みたい。
 今回の釣り名人は、アオリイカ釣りの基本を紹介しました。


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服部善郎

神奈川県茅ヶ崎市在住の
服部善郎氏が
アオリイカ釣りの基本をお届け致しました。

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