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2009 年 6 月 のアーカイブ

アナゴ釣りの基本

2009 年 6 月 10 日 Comments off
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アナゴ釣りの面白さは、誰にでも簡単に釣れる夜もあったり慣れた釣り人でも釣れなかったりすることだ。怪魚クロアナゴ釣りもある。

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ウナギ目アナゴ科クロアナゴ属

マアナゴが日本のアナゴの代表
 日本列島沿岸の海に棲むアナゴ一族の中で食用、あるいは釣りの対象となるのは「ゴテンアナゴ」「ギンアナゴ」「クロアナゴ」「マアナゴ」の4種だ。
 このうちギンアナゴは本州の中部から南の海にいる小型種で、食味はやや劣る。
 逆にクロアナゴは一族の最大種で2m余りに育ち、食味は劣るものの豪快な釣趣が魅力だ。ゴテンアナゴは平均50cmほど、茶色がかった銀色で目の後ろに2つの斑紋を持つ。食用になる。本州のほぼ全域広く棲んでいるがアマチュアが専門に釣る所はない。
 マアナゴ(Conger myriaster)は産業的にも釣りの世界でも、日本のアナゴ族を代表する種だ。
測線の白い点がまるで棒バカリの目盛りの様に整然と並んでいるところから市場などでは「ハカリメ」とも呼び、三陸や北海道などでは、「ハモ」と呼んでいる(本物のハモはハモ科で別種。北海道にはいない)。
 北海道から九州、朝鮮半島まで広範な岸に近い砂泥底の海に棲み、小魚やカニ、エビ類などを捕らえて最大1m余り(雌)に育つ。
 夜行性で昼間は砂泥底の穴にひそみ、首だけ出してじっとしているが、暗くなると穴から出て盛んに補食活動をする。だから、曇りや雨の日、また濁り潮の時は昼間でも釣れるが夜釣りが主である。

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北海道の”ハモ”の投げ釣り
 道南函館から噴火湾を経て、日高の浦河あたりまで・・・。太平洋に臨む浜や漁港、商港などの堤防は晩夏から秋にかけての夜、ハモ釣りマニア達で賑わう。
 ホッケやカレイ、アブラコ釣りなどが一服状態の初秋の頃は特にハモ釣りのピークで、夜ごと釣り場に通うフリークも少なくない。
 この釣りは、?月が小さく暗い夜、?凪(なぎ)の2つが条件で、これに日没から午後10時くらいの間に満潮という時間帯がからめば期待は一段と高まる。
 タックルは一般の投げ釣り様。3.9〜4.2m程度の投げ竿に大型スピニングリール。ラインは20mごとに色変え染めのナイロン、フロロカーボン等の3号。先端は3〜12号のテーパーの力糸。
 仕掛けもごく一般的な胴付き2本バリのカレイ用などで特別な仕様ではない。ただ人により、ハリのチモトに蛍光玉をつけたり、小型のサイリューム(ケミホタルなど)を装着したりする程度だ。
餌はイソメ、サンマやイカの切り身でイソメはハリに通し刺しにして3cmほどたらし、イカはチョン掛け、サンマは柔らかくて投入の際、ショック切れするので皮側からハリ先を入れ、ついで内側から皮側へハリ先を出す。
 タックルは2セット用意。距離、角度を変えて投入、スタンドに立て掛ける。
 ロッドの穂先にもサイリュームを装着すると微妙な魚信をキャッチしやすい。
 この釣りに”誘い”は不要。じっと置き竿にして穂先を見続けるうち、「ククッ」と小さな魚信、ここで合わすと失敗する。続く「ググッ」という力強い魚信で合わす。
 平均サイズは40〜50cmだ。

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東京湾の乗り合い釣り
 アナゴ釣りは江戸前伝統釣技の一つで、脈々と現代に受け継がれている。
 シーズン中は連夜、神奈川、東京、千葉の1都2件にまたがる沿岸各地から大型乗り合い船が稼働するが、こうした海は日本列島でも東京湾奥のみ。
 アナゴ釣りの人気は高い。
 ?どの船宿も出船時間は午後6時前後。帰港は10時頃なので勤め帰りのサラリーマンやOLも気軽に利用できる。?貸し釣具、仕掛け、餌などすべて船宿で用意しているのでビギナーも利用しやすい。?ビギナーでも数尾は釣れ、しかも獲物はすべて船頭が船上でさばいてくれる。?街の灯を見、涼しい潮風に吹かれて釣る・・・。合間のビールは極楽、ゴクゴク。
 釣りシーズンは晩春4月からスタート。6月,7月に「ツユアナゴ」の盛期を迎える。この時期のアナゴは”数よりサイズ”で親指より太いサイズが釣れる。
 盛夏の頃は一服状態だが、秋に再び盛期を迎える。特に昔から池上の本門寺のお会式の頃が盛期といわれてきたが、秋は”サイズより数”の季節。「メソッ子」とか「エンピツ」と呼ばれる小型の数釣りが楽しめる。

 このアナゴを釣る竿。昭和40年頃までは専用のアナゴ竿が市販されていた。
 全長80cm~1m。鯨穂、グラスなどの穂先を持つ和竿で穂先の調子は今流でいえば、15~20号負荷。強調子の糸掛け付きで2本を一対として使用した。
 また竹を加工した自製竿も多く使われていたが、どうしても穂先の調子が強く、魚影が濃かった昔は、これでも支障なく釣れたが現在では無理だ。
 今でもアナゴ専用の和竿を特別に注文したり、自製する江戸前釣り師もいるが、一般には1.6~1.8m、オモリ負荷10〜15号程度の先調子キス竿などを流用している。この場合リールは小型スピニングだ。
 いずれもミチ糸はナイロン5号30m。いずれもスイベルで3~4号サキ糸80cmを結び先端に15〜20号釣鐘型オモリ。ハリスは3号10cmと5cmの松葉型2本ハリスか、3号7〜8cmの1本ハリス。ハリスは蛍光タイプでカバーする型式が一般的だ。
 ハリスはフトコロが狭く、軸が長いウナギバリ10〜11号、流線型10号など。
 サキ糸に5mmくらいに短くカットしたパイプを2個通してオモリの2〜3cm上にケミホタルをつける。

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夕方、河岸払いすると船は富岡沖、羽田沖、千葉沖、長浦沖、木更津沖などの釣り場に急ぐ。この間に釣り人達は、?竿に糸を通し、仕掛けを結び、?竿掛けを船べりにセット、?子べりの下の棚に餌のアオイソメを入れた箱や手をぬぐう濡れタオル、ランプ、ペンチやハサミ、ハリスやハリ、発光体等の予備を置き、?足元に古新聞を丸めて底に敷いたバケツ。
 これで準備万端整う。
 ジェット機が発着する羽田空港や、京葉工業地帯など暮色を増す東京湾奥の風光に目を奪われるうちに釣り場に到着。アンカーを入れて釣り始めだ。
 青イソメは太めは1尾、細めは2〜3尾をいずれも全長5cmくらいに小さく房掛けにハリスに掛けて底に沈める。

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2本の竿はオモリが底の位置で水平になるよう糸を調節、左右で交互に2,3cm、オモリで底を小突く気持ちで竿の上下動を繰り返す。20号オモリで10号負荷の竿だと小突きを穂先が吸収して仕掛けの動きは微妙となり、アナゴを誘えない。強調子の穂先の竿が、この釣りには向いているのだ。
 この小突きのリズムは大切で、その日の魚の活性との関連もあって速めがよい夜、逆にスローテンポがよい夜もあるので、早くその夜の適正テンポを把握することが大切だ。
 ともあれ、一般的には1秒に2回くらいのテンポで上下し、10回に1度くらいの割で、10〜20cmくらい「スゥー」と竿先を上げて、”聞いて”みる。
 魚信を見逃していても餌を呑み込んでいるケースがあるので、時折、様子を見るのだ。
 魚信はいろいろ。いきなりガンガンと竿先をゆすってパッと離してしまったり、「ググッ」と小さな魚信の後、力強く引き込んだり、「ムズムズ」とまるでイヤイヤのようになかなかフッキングしなかったり・・・。

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 とにかくアナゴは簡単に誰にでもやさしく釣れる夜もあるが、概して”エサ盗り上手”なので、慣れた釣り人も合わせのタイミングには苦労する。そこがまたアナゴ釣りの面白さであり、釣り具と餌のつけ方、小突きのリズム、合わせのタイミングなどにより同じ船で竿を並べているのに5尾しか釣れない人の横で50尾も釣ってしまうケースは珍しくないのだ。
 また、食い渋り気味の夜は、ハリスを長めにして前面の海へ投げ込んでおくと向こう合わせで釣れるケースがある。 
合わせがきいてアナゴがハリに掛かったら、竿を立てて手に取り、竿を置いて糸をデッキに手繰り込む。リールなら竿をやや仰角に構えて巻く。そしてアナゴが水面まで浮いたら手を大きく伸ばして船に当てぬように取り込み、左手の親指と人さし指で首根っこをギュッとしっかりと押さえて右手でハリを外し、新聞紙を敷いたバケツに落とす。
 アナゴは暴れるが、新聞紙がクッションになって、外に飛び出すことはない。
 船上は作業灯で結構明るいし、船によっては釣り座に個人用のランプをつけた所もある。が、多くはそこまで装備していないので、ヘッドランプは持参したほうが安心だ。

東京湾のクロアナゴ釣り
 クロアナゴ(Conger japonicus)はトウヘイとかトウスケ等のローカルネームを持つジャンボアナゴだ。
 本州中部から朝鮮半島南部にかけての各地にいて、他のアナゴと異なって岩礁帯や沈船など障害物のある海で鋭い歯を駆使して小魚や甲殻類を襲い、2m余りに育つ。
 東京湾口の第三海堡周辺海域は、自然の礁やカケ上りなど変化に富んだ海底地形で、さらに人工構築にともなう大量の捨て石などが散在、これに湾口特有の急潮が流れて魚族にとって絶好の生活環境を形成している。
 クロアナゴにとっても棲み心地はよいようで昭和30年代には大人の太股級はざらで、時折、醤油樽のようなモンスターも姿を見せた。が、現在はオートバイのタイヤ級で、ぐっと小型化しているが、それでもハリに掛かってからの暴れ方は相当なもので、アナゴのイメージとはかけ離れた迫力に満ちた釣趣だ。
 船はアンカーで据える。釣り場の水深は30〜40mくらい。潮が速いので仕掛けはゴツい。手釣りでラインはポリエステル系30号。スイベルでナイロン30号サキ糸1m。釣鐘型中通し100〜150号ナマリを自製、ハリスはケブラーなど強力糸10cm。
 ハリはタイのテンヤ用親バリやマスタッド92611の6/0など、いずれも軸長系のハリでカエシを落とす。
 餌はサンマ。2つに切ってメン糸か細い銅線でハリにしっかりとくくりつける。
 底までオモリを沈めたら30cm幅に手を上下して海底の餌を踊らせる。
 魚信は概して鮮明で「ググッ」とか「ガッガッ」。たまには「モゾモゾ」といった不鮮明な魚信もあるが、とにかく魚信が伝わってきたら船べりに片足をかけ、腰を折って手を下に伸ばして糸をしっかりとつまむ。
 そして一段と激しい締め込みで体ごと糸をひいて合わせる。
 こう書くと、長い時間のようだが、第1信から合わせまでは5,6秒。早合わせだとフッキングしてもバレたり、待ち過ぎると尻尾を岩にからめるか、テコでも底離れしなくなるので気をつけたい。
 合わせがきいたら一手一手、糸にたるみを与えぬように手繰り上げる。クロアナゴは細長いボデイをくねらせ、ゴロンゴロンと激しく抵抗するが、糸を張って耐え、手繰り続ける。 

クロアナゴは暴れて、啼く
 糸は太い。水面まで浮かせたら一気に船上に抜き上げ、水を張っていない活け間の上に吊す。そしてハリにギャフを掛けて、ハリを立てるとクロアナゴは活け間に落ちる。
 歯がシャープで手をふれるとケガをすることもあるので、ハリはギャフで外すのだ。
 活け間のクロアナゴはドタンバタンと暴れ、時折、「グェー」と啼く。
 夜の海上で、錦蛇のような姿、そしてこの啼き声。気色よいものではないが、大物釣りの迫力だけは味わえる。
 ところで、このクロアナゴ、海外、特にイギリスではコンガ(Conger conger)の名で親しまれている立派なゲーム・フィッシュだ。
 解剖学的にはまったく同一種か否かはわからないが、外見的な特徴や棲息環境などは酷似しており、多分、マダイとゴウシュウ・マダイの違いほどの近似種と確信する。
 ちなみにIGFA認定の世界記録は1991年8月、イギリスのプリマス沖でハンス・クリスチャン・クラウゼン氏が釣った50.12kg!!
 今回の釣り名人は、あなご釣りの基本を紹介しました。

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