スルメイカ基本編
スルメは手釣りが関東のベテランアングラーの常識。
縄鉢は自分のきき腕側に置くのが基本
本当にイカが大好きな日本人
世界中の海でイカは年におよそ150万t捕れるが、その半分は日本1国で消費する。日本は世界一の”イカ好き”なのだ。
その日本人にとって最も馴染み深いイカがスルメイカだ。関西、西日本方面ではケンサキイカを好むが全国的にはスルメイカだ。
スルメイカ(Todarodes pacificus)はケンサキイカやヤリイカなどと姿は似ているが、目に膜を持たない「開眼亜目」。胴は紡錘型で先端部の左右にほぼ三角形の一対の鰭を持ち、体色は淡褐色だが、興奮すると赤褐色に変化する。胴の中心には黒っぽい縞が走っており、普通サイズは胴長30cm、幅8cmくらい。
昼間は比較的深い海の底にいるが夜になると浅海に上がって小魚などを盛んに補食する。もちろん日中でも活動するが特に活性が高まるのは水温14〜18℃の間といわれている。
イカやタコなどのように胴の下に頭があって、その下に足(実は腕)がある動物を頭足類という。イカもタコも種によっては足の長さが異なり、それが一つの特徴となっている。「腕長式」といって腹側(ロート管のある側)を下向きにして、イカの場合なら左右5対、タコなら4対に分け、一番上の一対が1、次の一対が2という具合に分けて、足の長さの順に番号を並べて種を決める一つの決め手としている。
スルメイカは「3.2.1.4」。ちなみにヤリイカは「3.2.4.1」だ。
さて、釣りだが、アマチュアのイカ釣りは全国的に見て関東が最も盛んだ。
北海道石狩湾や津軽海峡、新潟や佐渡ヶ島、島根半島、隠岐、三陸、紀伊半島沿岸など各地でイカ釣りは行われているが、スルメイカはほとんど夜釣りで”シーズンのメインターゲット”とはいえない。
その点、関東では神奈川県横須賀市長井のように周年イカ専門に狙う釣り宿があり、アカイカ、ケンサキイカ、スミイカなど特定のイカのみをシーズン中専門に釣らせる船宿もたくさんあって、イカ釣りは関東の沖釣りではタイ、アジ、キス、イナダと並ぶ人気の釣りだ。
手 釣 り
イカヅノは小魚などのイミテーションだ。ルアーなのだ。ルアーは人為的にアクションを与えることで生命が宿り、イカが反応する。手釣りだと竿釣りによりデリケートなアクションが伝達できるうえ、重い中オモリやナマリヅノなども楽に扱え、時には仕掛け全体をフケさせてタナに集中させることも可能などいろいろな利点が多いので、慣れた釣り人には手釣り派が多い。
とはいえ、数十mから100mもの深い海を終日手で釣るのは、かなり重労働だし、糸や仕掛けもある程度扱い方を習練しないと、せっかくの潮時にからめて釣りにならない。
特に風や波が強い日は糸がからにやすくプロでも苦労する。それでも”スルメは手釣り”が関東のベテランアングラーの常識になっている。
標 準 的 な 釣 り 具
ミチ糸は楽にたぐれて滑りにくく、たぐると床によく馴染むポリエステル系(トト糸など)24号200m。10mから20mごとに色換え染めが好ましい。これを底が平らで低い”縄鉢”などに手繰り込んでおく。
中オモリ40号程度の三日月形で上下にヨリモドシをつけ、上はミチ糸、下はナイロン8号3本撚りを2m結んで水中ライト。
仕掛けはナマリにガス糸を巻いた一段カンナの8〜10号ナマリヅノ。間隔は1.5〜1.7mで約1ヒロ、各自、自分の体に合った間隔で、上段は10~12号、下段は5~6号という具合に順次上から下へ細柄ナイロンを結んでゆく。
先端はスナップ・ヨリモドシで60〜80号オモリ。
ミックスタイプも多用されている。例えば10本ヅノならば、上6本はナマリで」下4本を18cmのプラヅノにする。
ツノはルアーだ、手応えズシッ
縄鉢は自分の体の右側(右ききの場合)に船の揺れで滑らぬよう、そして糸を手繰り込みやすい位置に置く。
船頭は魚探でイカの群れを探り当てるとやや潮上に船を廻し、風上にミヨシをたてて船を潮なりに流し、ゴー・サインを出す。
素早くオモリから順にツノを1本ずつ手際よく海へ送り、船頭が指示するタナまで沈める。日中のスルメイカの場合、底狙いのケースが多いが、活性が高い時は中層でも乗る。 タナ、または底まで沈めたら、?右手で糸をつまんで、?60〜70cm勢いよく引いて糸を縄鉢へ、?左手でつまむと同時に右手は離し、左手を30cmほど引く。?左手を交差させた右手で糸をつまんで、?〜?を繰り返す。
ツノはルアーだ。小魚のルアーだから、あたかも小魚がイカや大きな魚に追われて、ススッと逃げるさまを頭に描いて糸を一手一手メリハリをつけて手繰るうち、「ズシッ」と重たい手応え!
釣れたらそのタナを糸の色で確認、さらに?ゆっくり手繰る。?ややソフトに手繰る、などして2杯目、3杯目を狙う。
縄鉢のミチ糸には時折、潮(海水)を振りかけて湿り気を与えると馴染みがよい。
イカが乗って仕掛けが海面に現れたら、上から中オモリ、水中ランプの順に鉢の隅に並べ、次いで?右手の親指でツノを押さえ、?右手を上げるトト藻に左手を伸ばしてミキ糸を押さえ、?右手のツノを鉢に置いてから左手と交差させて2番目のツノを押さえ・・・、?〜?を繰り返してツノを取り込み、イカが掛かっているツノはハリを上に向けてたてる。すると、イカは手を触れなくても下へ落ちる。
竿 釣 り
竿釣りの利点は風並の日でも糸からみの心配がないこと。イカをかけても竿の上下動でコントロールできるのでバレが少ないことだ。竿先を見て楽しみながら釣れることなどで、プロ的感覚の手釣りに比べれば、能率の点で確かに劣るが、”楽しく、気分よく、それでいてほんの少したくさん釣れれば大満足”といったリクエーショナルな釣りではロッド&リールにブランコ仕掛けのイカ釣りが似合う。
タックルは長さ2.4〜2.7m、先調子のオモリ負荷80号程度の竿に中型両軸手動リール。近年は電動リールも多用されている。ラインは伸び率が低くて強く細柄が使えるPE形5号ライン200m以上。
仕掛けはミキ糸上部8号、下部6号で1.2〜1.5m間隔にチチワ結びで4~5号7cmのエダスを5〜7本。
ツノはプラヅノ14cm。イカが大型の場合はミキ糸8号、エダス6号、ハリ間は1.5m。プラヅノは18cm。
晩春の頃釣れるスルメイカの幼体「ムギイカ」には2.1〜2.4m、オモリ負荷30号程度の先調子竿に両軸リール。PE系3号ラインにナイロン8号のサキ糸を10m。仕掛けはミキ糸5号80cm間隔に3号7cmエダス5〜7本。
ツノはプラスチックの本体にガス糸巻きの7〜8cmウキスッテ。棒型のアワヅノも悪くない。オモリは60号。
いずれもにプラヅノはヤリイカよりも濃い色で、棒型プラヅノに9cmのガス糸巻きウキスッテを併用すると時に効果的だ。
流し釣りで船頭が指示するタナか、特別に指示がなければ、まず底を狙ってみる。
仕掛けをタナ、または底まで送ったら、竿先を下向きに構えた状態で糸を張る。
ここから「スイッ」と目の高さまで小幅にシャープにしゃくり上げ、次いで頭上まで同じようにシャクる。今度は竿を最初の位置まで戻しながらリールを巻き、「スイッ」「スイッ」とシャクリ上げる。
「ズシッ」、イカが掛かると重く竿の穂先がしなる。そのまま竿を構えながらゆっくりリーリングして2杯目を狙う。重さが一段と加わったら2杯目、3杯目が掛かった合図。ゆっくり、糸をたるめずに巻き上げる。
海面まで巻き上げたら竿をホルダーに掛けて糸を手に取り、仕掛けをたるませないようにツノを取り込んで投入器あどに収容、掛かったイカは船に当てないよう手を外へ大きく伸ばして取り込み、ツノをたててイカを外す。
なお、電動リールの場合、イカが掛かった時は手動で巻き上げる。バレを防ぐためだ。
神奈川県茅ヶ崎市在住の
服部善郎氏が
スルメイカ釣りの基本をお届け致しました。
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